子どもや教育の問題を論じる様々な場面で「居場所」という言葉がさかんに使われるようになってきている。その背景には、子どもにとって精神的に安定できる空間が少なくなってきたという問題意識がある。
1992年の文部省学校不適応対策調査研究協力者会議報告「登校拒否(不登校)問題について―児童生徒の『心の居場所』づくりを目指して」は、登校拒否がどの子どもにも起こりうるという観点から、学校が子どもにとって「心の居場所」であることが必要であるとした。
居場所はただ子どもが居る物理的空間を指すのではなく、子どもが自己を肯定、受容したり、他者に受容されている、あるいは他者を受容していると感じたりして、精神的な安定を得ることのできる場所である。子どもにとっては自分の居室のように一人になれる場所や、学校の教室や地域の諸施設のように仲間と共有できる場所、大人の教育的まなざしから解放された自由な空間など、様々な性格の場所が居場所と捉えられるであろう。
一口に居場所といっても、その性格や機能は様々であると考えられるから、多様な居場所を構想する必要がある。学校では教室ばかりでなく保健室や相談室の居場所としての役割が注目されているし、地域でも子どもの居場所づくりが進められるようになってきている。