2024年3月、静岡県の労働組合が教育長に対し「臨時採用教員を正規雇用に」という要望書を提出しました。
概要としては以下となります。
静岡県内の教員不足を解消するため、教員の労働組合が臨時採用の教員を正規雇用するよう要望しました。
労働組合の担当者は、教育長宛ての要望書と約3,800人分の署名を県教育委員会の担当者に提出しました。要望書では、臨時教員としての経験が正しく評価されず、教員採用試験の受験を諦める人がいると指摘し、これが教員不足の要因となっているとしています。そのため、臨時教員の正規雇用を求めています。
全静岡教職員組合の長澤裕書記長は、「5年目、6年目の頑張っている人が不合格になってすごく自信を失っている。この人たちが希望を失って辞めてしまったら、ますます学校はもう続かなくなってしまう」とコメントしています。

よい動きであるといえる一方、不満を感じている人が大多数いるのは間違いないと思います。
そして教育現場によい影響と悪い影響、どちらもあると私は思います。
教員採用試験に合格できず講師として働く人は多い
教員採用に何年も挑戦しているが、なかなか合格できない人は結構います。そのような人たちの多くは「講師」という立場で学校で働いているケースが多いです。

正規教諭も講師も、外部の人からするとどちらがどちらなのかわかりません。
年度末に発表される先生方の異動の欄に、正規教諭は名前が掲載されますが、講師は掲載されません。そこでくらいしかわからないと思います。
仕事をしながらの勉強はハード
正規教諭も講師も、仕事内容は基本的には同じです。
昨今、学校の先生の仕事は大変だといわれていますが、講師として学校で働きながら採用試験の勉強を行うことになります。なかなか勉強時間を確保できず、合格まで何年もかかってしまう講師は多いです。
不合格が続いた場合には、ある程度のところで区切りをつけ他の仕事を探す人も多いです。
勉強内容が異なる
学校という教育現場で何年働いたとしても、そこで得られる知識と教員採用試験で求められる知識は異なります。
そのため採用試験用の勉強をしなければなりません。そうなると勉強時間を多く確保できる人が有利となります。つまり「現役大学生」です。
ライバルは現役大学生
採用試験でのライバルは現役大学生です。
大学で教員採用試験用の対策をしっかり行って来ています。現役との勝負はなかなか厳しいものです。
また通信大学で教員免許を取得した人たちにとっては、さらに厳しいものとなります。なぜなら教員免許を取るときの勉強と、採用試験の勉強は別物だからです。
教員希望者の門が大きく開く しかし複雑
今回の動きは、教員採用試験に合格しておらず、正規教諭を希望しながらも講師として勤務している人たちにとっては良いことといえます。
良いことではあるのですが、正直複雑な気持ちです。
それは今まで、なかなか正規教諭になれずに先生という仕事を諦めてしまった多くの講師がいたためです。
人手不足だから仕方のないことなのかもしれません。でも複雑ではあります。
講師経験が優遇されるようにはなっていた
静岡県でも講師経験が採用試験に優遇されるようにはなっていました。
かつてはそのような優遇処置はありませんでした。しかしいつからか講師経験が採用試験にプラスに働くようになったのです。講師経験者特別選考というものです。
さらには前年の採用試験で1次試験は合格したが2次試験で不合格となってしまった場合、講師経験者枠に志願することで翌年の採用試験の1次を免除されるようにもなっているようです。
※年々ルール変更されていてもはや追いつきませんが、先生になりやすい環境にはなっています。
このような状況であるのにも関わらず、教育現場の人手不足というのは理解ができない点ではあります。
教員採用試験の倍率は低すぎるというわけではない 人手不足でも不合格者が多数
教員が人手不足とはいっていますが、教員採用試験の倍率はそれなりの数字です。
以下は「令和7年度静岡県公立学校教員採用選考試験の結果」です。倍率は当サイトで算出しました。
校種教科 | 志願者数 | 受験者数 | 1次合格者 | 2次合格者 | 倍率 | |
小学校 | 604 | 557 | 423 | 193 | 2.9 | |
中学校 | 国語 | 59 | 50 | 40 | 22 | 2.3 |
社会 | 137 | 127 | 30 | 11 | 11.5 | |
数学 | 84 | 78 | 48 | 18 | 4.3 | |
理科 | 59 | 54 | 32 | 15 | 3.6 | |
音楽 | 36 | 35 | 12 | 4 | 8.8 | |
美術 | 21 | 19 | 12 | 6 | 3.2 | |
保体 | 140 | 132 | 24 | 11 | 12 | |
技術 | 10 | 8 | 8 | 6 | 1.3 | |
家庭 | 5 | 4 | 4 | 4 | 1 | |
英語 | 64 | 56 | 50 | 19 | 2.9 | |
計 | 615 | 563 | 260 | 116 | 4.9 | |
高等学校 | 国語 | 55 | 50 | 35 | 19 | 2.6 |
歴史 | 61 | 52 | 18 | 7 | 7.4 | |
地理 | 15 | 12 | 8 | 4 | 3 | |
公民 | 24 | 19 | 7 | 3 | 6.3 | |
数学 | 69 | 64 | 37 | 14 | 4.6 | |
物理 | 17 | 17 | 8 | 5 | 3.4 | |
化学 | 28 | 26 | 12 | 3 | 8.7 | |
生物 | 29 | 25 | 14 | 8 | 3.1 | |
地学 | 4 | 4 | 3 | 1 | 4 | |
保健体育 | 145 | 125 | 23 | 7 | 17.9 | |
音楽 | - | - | - | - | - | |
美術 | 9 | 9 | 5 | 2 | 4.5 | |
書道 | - | - | - | - | - | |
外国語 | 57 | 51 | 30 | 14 | 3.6 | |
家庭 | 15 | 14 | 9 | 5 | 2.8 | |
農業 | 12 | 10 | 5 | 2 | 5 | |
工業 | 19 | 16 | 9 | 4 | 4 | |
商業 | 29 | 24 | 13 | 6 | 4 | |
水産 | 3 | 2 | 2 | 1 | 2 | |
情報 | 14 | 10 | 3 | 1 | 10 | |
福祉 | 0 | - | - | - | - | |
ネイティブ | 4 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
計 | 609 | 531 | 242 | 107 | 5 | |
特別支援小学部 | 73 | 66 | 63 | 43 | 1.5 | |
特別支援中学部 | 国語 | 6 | 6 | 6 | 1 | 6 |
社会 | 15 | 12 | 12 | 7 | 1.7 | |
数学 | 7 | 6 | 5 | 3 | 2 | |
理科 | 4 | 3 | 2 | 1 | 3 | |
音楽 | 8 | 7 | 7 | 5 | 1.4 | |
美術 | 1 | 1 | 1 | 0 | - | |
保体 | 55 | 46 | 36 | 28 | 1.6 | |
技術 | 1 | 1 | 1 | 0 | - | |
家庭 | 1 | 0 | 0 | 0 | - | |
英語 | 7 | 6 | 4 | 2 | 3 | |
計 | 105 | 88 | 74 | 47 | 1.9 | |
特別支援自立活動 | 4 | 4 | 4 | 4 | 1 | |
養護教員 | 195 | 166 | 32 | 9 | 18.4 | |
栄養教員 | 36 | 32 | 4 | 2 | 16 | |
合計 | 2241 | 2007 | 1102 | 521 | 3.9 |
教員不足でも大量に落ちている人はいる
上記の倍率をみてもらってもわかるとは思いますが、不合格となっている人は多数います。
もちろん、ある一定の合格基準はあることでしょう。まったく知識のない人を教員として採用することは、人手不足とは違った問題が発生する可能性があります。
とはいえ、かなりの人が不合格となっています。
講師になるのに試験はない
採用試験に合格できず、それでも先生を目指す人の多くは教育委員会で講師登録を行います。
講師登録をすると、人手が足りていない学校で働くことができます。多くの学校が人手が足りておらず、また病欠や産休の先生は大抵いるため、1つの学校に数人の講師は必要となります。
冒頭でもお話ししましたが、講師の仕事内容は正規教諭と同じです。
ここに矛盾があります。
「教員採用試験では学力が足りないということで不合格にしているのに、講師になるためには試験なし」なのです。仕事内容はほとんど同じです。
講師でも学級担任となることはできます。
これに関してはずっと違和感があります。
学校現場が講師を判断し教諭へ
講師としての働きを認められれば正規教諭になるという雇用方法はありだと思います。
その学校の校長先生や教頭、学年主任あたりが「この講師は教諭としてやっていける」と判断できれば、推薦状を教育委員会に提出するという方式でよいと思います。
教員を長くしている諸先輩方の判断なので、確かなものだと思うのです。
採用試験合格組と講師経験者組という合格方法があってもよいと思うのです。
教員希望者にとっては門が広がって行っている
教員希望者に対しては、どんどん門が開いていっていると思います。
採用試験の倍率もそれほど高すぎるわけではありません。また採用試験が駄目でも講師という道でその先に希望が見つけられる状況になってきました。
「いつ合格できるのだろう。将来が見えない・・・」
かつてはそのような講師も多数いました。それに比べると今はよい状況になってきました。
ただしそれが教育を受ける子どもたちにとって良いことかどうかは話は別です。
かつては倍率が高かった
教員採用試験の倍率はかなり高い時期がありました。1995年~2002年前後、いわゆる就職氷河期世代です。
倍率が高かったということは、採用試験に合格した人は学力が高かったということになります。その人の学力と教える力は比例するとは限らないのですが、少なくても先生自身の学力は担保できているわけです。
確率から考えると、学力の高い人が子どもに教えたほうが子どもの力が伸びる可能性があるかもしれません。
倍率が低いのに不合格ということは
現状は倍率はそれほど高くはありません。しかしその状況下でも不合格となる人はいます。
そして講師となり、経験者ということで教員になる。すると学力が低い教員が誕生する可能性が高まるということになるかもしれません。
学力も大事だが経験と情熱も必要
先生という職業は学力はある程度は必要です。ある程度です。
学力も大事なのですがそれよりも、机の上以外のことを知っている人、つまりさまざまな経験をしている人が先生として生徒の前に立った方がよいと思うのです。
学力は後付けで、ある程度何とでもなります。しかしさまざまな経験は、学校で働きながら得ることは難しいです。
何を言いたいのかというと、採用試験の方式を変更したほうがよいと思うのです。
これについては当サイト内でも何度も考察しているので省きます。
いずれにしても、教員として働く方法がどんどん広がっていって良いことだとは思います。あとは受け入れる教育委員会が社会不適合者を採用しないように祈るばかりです。

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