情報化社会の進展により、世界中に情報網が張り巡らされ、たとえばテレビ映像によって、はるか遠くのできごとも自分がそこにいるかのような臨場感をもって体験できるようになった。インターネットなどパソコンを通した通信技術の発達は、そうした傾向をますます助長しつつある。体験できる世界が飛躍的に拡張した分、体験の中に間接体験の占める比率が高まっている。
直接体験することの不可能な遠く離れた世界のできごとを臨場感をもって体験できることの教育的効果には計り知れないものがある。
ただし、情報というかたちで与えられる体験には、便利さと裏腹に限界があることも無視できない。事件や事故の悲惨な現場でも、お祭りのような楽しい場でも、それを見て心を動かされ、手を差し延べたいとか参加したいとか思ったところで、実際にははるか遠くのできごとである。押し寄せる間接体験の洪水のなかを生きる現代の子どもたちは、そのような傍観者の立場にたえず置かれている。
それが現実の世界に対する傍観者的態度や無力感を生む。現実に対する効力感を体得させるためにも、直接体験を促進する働きかけが必要である。