学級における危機管理

学校の危機管理とは、

(1)学校教育に関係して生じる事件・事故を防止する予防的な措置
(2)予期せぬ事態の発生によって被る個人や組織のダメージを最小限に食い止める措置
である。

その目的とするところは、

(1)子ども・教職員の命
(2)学校の安定した日常
(3)学校・教師に対する信用・信頼

などを守ることである。

学校に発生する危機の種類としては、

(1)子どもの事件・事故
(2)子どもと教師間のトラブル
(3)保護者と学校・教師間のトラブル
(4)教師間のトラブル
(5)組織運営上のトラブルや緊急事態
(6)火災、地震、台風などの災害
(7)テロ、誘拐などの社会的災害

などがあげられる。

しかも、大阪教育大学附属池田小学校において発生した事件に象徴されるように、社会的災害が教室に持ち込まれる趨勢にある。これまで、日本の学校は、地震、火災、台風など自然災害に備える対応を積み重ねてきたが、これに加えて社会的災害への備えにも目を向け、この備えに力点を置く必要がでてきたといえよう。

大阪教育大学附属池田小学校の事件について公表された資料から、その一端を読み取るならば、一人ひとりの教師の対処能力が限界を超えた段階で、全体の状況把握と組織的な対処行動をはかる能力を失い、学校としてダメージの拡大を阻止する機能を一時的に喪失したものと読み取れ、危機の発生時における組織的な行動の在り方について問題を提起している。

このような一連の動きを踏まえる形で、文部科学省「学校施設の安全管理に関する調査研究協力者会議」は、「学校施設の防犯対策について」(報告書)(平成14年11月)をまとめた。報告書は、第一章「学校施設における防犯対策の方針」、第二章「学校施設の防犯対策に係わる計画・設計上の留意点」、第三章「学校施設における防犯対策の推進方策」の三部構成になっている。

この報告書は、学校の安全対策にあたって参考になる点も少なくない。しかし、防犯対策の観点からハードウエアの整備にシフトしたまとめ方をしており、社会的災害に備えるソフトウエアの提示については必ずしも十分とはいえない。

すなわち、開かれた学校の安全管理にあたって、

(1)地域社会の人々によって守られる学校の安全
(2)学校施設とソフトウエアの見直し
(3)安全確保に経費を投入する
(4)学校の組織と教職員一人ひとりの危機管理能力を高める

などの点から一層の取り組みを進める必要がある。

いずれにしても、教室も決して安全なところとはいえない状況にある。授業や休み時間など教室においても事故は発生する。さらに、テロなどの社会的災害の危機にさらされている。この発生を抑えるために、教室の安全管理に関するノウハウが一層要求されているといえよう。すなわち、学級担任には、危機管理についての問題意識と知識・技能の獲得が求められるようになったことを確認しておきたい。

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