現代の便利で快適なライフスタイルの追求は、人々の生活体験の幅を狭める方向に向かっており、子どもたちの多くは身の回りのことをほとんど自らの手ですることなく大人になっていく。
ノコギリやカナヅチやヤスリを用いて本棚などをつくったこと、切れた電球を取り替えたこと、編み物をしたこと、服のほころびを直したこと、取れたボタンを縫いつけたこと、ハンカチやタオルを手洗いしたこと、洗濯物を干したこと、おかずをつくったことなどがない、あるいはほとんどないという子どもたちも珍しくない。
自然に任せていたら、身の回りのことを自分でする経験が抜け落ちてしまう時代である。そのような経験は人工的環境が高度に増殖した現代のライフスタイルが必要としないものであり、経済力により省略可能なものである。だが、身辺自立による生きる力の向上という観点からすると、大工作業、裁縫、料理、洗濯、掃除など身の回りのことをひととおり経験させておくような環境教育的な働きかけが必要である。