中世までは子どもは存在せず、7歳くらいになって幼児期を脱すると大人の仲間入りをしたとする見方がある。この場合の子どもというのは、生物的な意味でなく社会的意味における子どもである。17世紀までの中世芸術では子どもは描かれることがなく、背丈以外に子どもらしさを示す特徴がないことを『子どもの誕生』において指摘したアリエスは、当時の社会に子どもという観念が存在しなかったと考える。
子どもは単に身体の小さい大人だったのである。子どもが社会的に生み出されたという見方は、アリエスの指摘以来広く浸透した。ポストマンは、印刷技術の発明によって子どもが大人の領域から追放されていったとするが、読み書き能力の獲得を中心とする教育を受けるべき子どもというのは、それ以前には存在しなかった。
子どもの発見という点において、子どもは小さな大人ではないとするルソーの主張は画期的な意味をもつとみなされる。ルソーは『エミール』において、人は子どもというものを知らない、子どもは子どもでなければならない、子どもには特有のものの見方・考え方・感じ方があると指摘し、当時の子ども観を否定するとともに、子ども固有の価値を認めた。