各都道府県の教育委員会が毎年行っている「教員採用試験」に合格すると、翌年の4月から合格者は初任者研修という研修がスタートします。研修はメインとして配属された学校で行われていきます。その際、初任者には「指導教員」というベテランの教諭がつくことになります。教師としての基礎・基本を叩き込まれていくことになるのです。初任者たちは研修の一環として、毎週「学習指導案」を作らなければなりません。
「学習指導案」というのは、授業の流れを文章化、図式化したものです。これを作るのはとても手間と時間がかかります。大抵の場合、学校現場では「一太郎」というソフトを使います。まれに「ワード」を使うこともありますが、現在まで多くの教諭は「一太郎」を使ってきているので、指導教員に合わせるという点でも「一太郎」を使えるようになったほうがよいのかもしれません。
ただしこれはかなり以前の話で、今ではワードで作ることも一般化してきたとされています。
また、初任者研修の中には「参観授業」などもあります。これは指導教員が初任者の授業を見て、指導を行うというものです。もちろんこの際にも「指導案」を作ることになります。
つまり初任者は頻繁に学習指導案を作成することになり、さらには夏季休業中には泊まり込みの研修も組まれていたりします。
このように初任者の先生は、通常業務以外に研修を行わなくてはならず、初任者である1年間はとてもハードな時間を過ごすこととなるのです。
ではこの初任者研修は有意義なものなのでしょうか。実はこれが疑問なのです。
初任者の指導教員は大抵40代~50代。その頃、初任者研修という制度はなかったということです。自分たちが研修を受けていない状態で現在に至り、初任者の指導をすることになっているのです。また、初任者研修をしたからと言って授業がうまくなるのかというと、必ずしもそうとは限りません。
そもそも授業の善し悪しは、誰が決めるのでしょうか。
授業を受けている子ども達か。その保護者か。周りの教員か。
また授業がよければ素晴らしい先生なのかというと、そうとは限りません。
初任者研修が全く役に立たないとはいいません。しかしよい教員になるためには資質によるところが大きいと思います。
その人の性格、生きてきた中での経験などが子どもたちへの教育に大きく影響します。
子どもの感情を読み取る資質。子どもに理屈なしで好かれる魅力。適度な指導力。
さまざまな資質が教員には必要でしょう。しかしこれはたった1年で身につくものではありません。また、学校現場で身につくものでもないと思っています。それまで生きてきた人生で身につくものではないでしょうか。
ある教員は言いました。
「初任者研修などするから、マニュアル通りの教師しか育たない。マニュアル通りになど子どもは育たない。マニュアル通りの教員には面白みを感じない。」
まったくその通りだと思うのです。
研修の中で基本を身につけるのは必要だと思います。しかし、あまりの研修の忙しさで初任者を追い込んでしまうのは、ズレいると思うのです。
実際に、初任者の離職率は年々高くなってきています。
もっと初任者には自由に学校現場で活動してもらいたいと思います。そして目に付くところがあれば、指導教官がほんの少しアドバイスをしてあげればよいと思うのです。
初任者もよい大人です。少し言われれば気づきます。もし気づかない、改善されない、それにより子どもたちへの指導がおかしなことになるなどの影響が出るようであれば、それはそういった人を採用してしまった教育委員会に責任があるでしょう。といってもそこでクビにするわけにもいかないでしょうから、そういった教員に対しての研修を専門に行うということも1つの方法かもしれません。
私の個人的な意見としては、教員になったら数年間は一般企業で働く経験を積ませるのがよいと思います。教師が教えている子どものほとんどは、将来教員になるわけではありません。一般的な会社に就職することがほとんどでしょう。そういった一般の会社を知るのも経験になると思います。さらに子どもの保護者も一般的な会社で働いています。
そのようなことからも、研修として2年~3年、一般の会社で働いてみるというのは、教師の資質を伸ばすという面でもよいことだと思います。
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